遺産相続手続きに期限はあるか?

相続税の申告および納付は、被相続人の死亡から10か月以内とされており(厳密には、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内。相続税法第27条第1項)、税金には期限があります。

これに対して、遺産分割手続きには法律上の期限はありません。

 

弁護士業務を行っておりますと、被相続人が亡くなってから数十年間も遺産分割手続きがなされないまま放置されているケースのご相談を受けたりします。

法律上の期限はない、長年にわたり遺産分割手続きをしない人もいる、と安心する方もいるでしょう。

しかしながら、遺産分割手続きをしないままでいると、もし、更に相続が発生した場合(例えば、遺産分割手続きが完了しないうちに、相続人の一人が亡くなり更に別の相続が発生した場合)、関係者の数が増えて、いざ遺産分割手続きをしようとしても合意形成が難しく、遺産分割手続きが難航する場合があります。

 

また、2024年(令和6年)4月1日から改正不動産登記法が施行され、遺産のうち不動産については、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました(改正不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由のない申告漏れには10万円以下の過料が課される可能性があります(改正不動産登記法164条)。

つまり、今後は、不動産相続について相続登記の期限が設けられることになります。

 

この法改正は、相続登記がなされないまま放置された不動産、つまり、不動産登記上の名義人と民法上の実際の所有者が一致しない不動産が多数存在するため、公共工事等の用地買収に時間と手間がかかるという背景事情から行われました。

なお、この3年以内の相続登記申請の義務については、自らが相続人であることを登記所に申告することで義務を履行したとみなされます(相続人であることの申出制度。改正不動産登記法第76条の3第1項第2項)。

 

いずれにしても、遺産分割手続き(遺産相続手続き)については、放置せずに行うことが肝要です。