前回のコラムと関連した内容です。
会社では、役員報酬を会社経費(販管費の一部)として損金処理しています。
経営者の方々は、会社顧問税理士から、「決算から3か月以内に役員報酬改定しましょう。前年度の業績を受けて今年の役員報酬は~~」と助言を受けていることと思います。
法人税の扱いにおいて、改定した役員報酬を損金処理するため「定期同額給与」と認められるためには、
「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合にはその指定に係る月数に2を加えた月数)を経過する日(以下「3月経過日等」といいます。)まで(継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定で、その改訂が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改訂の時期まで)にされる定期給与の額の改定」
である必要があります(法人税法第34条第1項1号,法人税法施行令第69条第1項第1号柱書及びイ)(出典:国税庁HP「タックスアンサー」No.5211役員に対する給与1(2)イ)。
要するに、基本的には、事業年度の開始から3か月経過後に報酬改定したら定期同額給与として損金処理できませんよ、ということです。
このため、多くの企業では、前年の業績を踏まえ、毎年の決算後3か月以内にその次の事業年度の役員報酬を改定していると思います。
この役員報酬改定については、株主総会(または株主総会から委任を受けた取締役会)の決議で行っているでしょう。
ここで一つの問題が生じます。
上記のとおり、法人税上の損金処理の都合上、役員報酬改定(または見直し)を1年毎に行うよう顧問税理士から助言を受けることが多いと思います。
他方で、中小企業の役員任期は2年(又は最大10年)が多いのですが、会社法上、株主総会又は株主総会から委任を受けた取締役会で決議した取締役報酬は、決議により、会社と当該取締役との間の契約ないようとなるため、その後、株主総会や取締役会で減額決議したとしても、当該取締役の同意なしに減額できないのです。
つまり、法人税と会社法の間で、取締役報酬の改定(減額)に関してギャップが生じているのです。
このギャップを埋めることができないか、3つの策が考えられます。
1つ目の案は、報酬改定の都度、当該取締役の同意書を取り付けておくことです(特に報酬減額の場合)。
報酬改定は会社と取締役の間の委任関係の内容に変更を生じさせるものですから、報酬改定を行う会社機関の決議(株主総会決議または取締役会決議)と同時に、他方当事者である取締役から同意を得ておき書面に残します。
契約内容変更を合意して書面に残す、ということです。
2つ目の案は、法人税の扱いに合わせて取締役任期を1年にしておくことです。
デメリットとしては、重任のための登記を毎年行わなければならないという煩雑さと、登記費用コストが増します。
3つ目の案は、役員報酬を定める株主総会決議で、期間を1年に区切る条件を付して報酬額を定める決議を行う案です。
留意点として、取締役就任前に、当該取締役との間でその旨を役員任用契約書等で明示しておくと後日の争いリスクを低減できるでしょう。
個々の取締役の具体的報酬額決定を取締役会に委任する場合には、1年分の役員報酬総額の上限を株主総会で決議して、取締役会に委任するとよいでしょう。株主総会から取締役会に対する委任の範囲を明確にし、1年に区切る条件を付すことが委任の趣旨に反しないことを明らかにするためです(株主総会でその旨決議しなくとも1年に区切る取締役会決議が株主総会からの委任の趣旨を逸脱したとは直ちに断定されないでしょうが、疑義を無くするには株主総会で決めておいたほうが良いと考えます)。