取締役の報酬 中小企業では

取締役は株主総会で選任されます(会社法329条)。
選任されると、会社を委任者、取締役を受任者とする委任関係が成立します(会社法330条)。

取締役の報酬については、会社法上、定款に定めるか又は株主総会決議で定めることになっています(361条)が、実務上、定款で定めていることは稀です。定款に定めた場合、報酬額を変更するには定款変更をしなければならないためです。

また、報酬を株主総会決議で定める場合、全取締役の報酬総額の上限額を定めた上で、各取締役の個別報酬額の決定を取締役会に委任することが多いです。それは、各取締役の報酬額は、各取締役にとってのプライバシーであるとして株主に対して秘匿する必要があるため、とされています。
もっとも、株主・取締役が家族・親族のみの場合には、わざわざ取締役会に委任せず、条文どおり株主総会で各取締役の個別報酬額まで決定しても、プライバシーの問題はないように思います。

さて、株主総会(または、株主総会から委任を受けた取締役会)で各取締役の報酬額が定められた場合、会社と取締役の間の委任契約内容となり、各取締役は報酬請求権を取得します。
契約は両当事者を拘束しますから、契約の一方当事者が、他方当事者の同意なしに契約内容を勝手に変更することはできません。
つまり、一度、株主総会(または、株主総会から委任を受けた取締役会)で報酬額が定められたら、たとえ株主総会で減額の決議がなされたとしても、会社は、各取締役の同意なしに、残りの任期中の報酬額を一方的に減額することはできません。
同意が無ければ、原則として、残りの任期中も、減額しない報酬を支払う義務を負います。