書面決議による取締役会

 

前回のコラムではWeb会議での取締役会を紹介しました。

コロナ禍での取締役会運営として,もう一つ,会議体としての議論をせずに取締役会決議があったと法的に見なすことができる制度を紹介します。


会社法370条で定められた「取締役会の決議の省略」という制度です。「書面決議」とも称される制度です。
これは,
①予め定款に,取締役会の決議の省略制度を用いる旨の定めがあること
②取締役会の決議事項に関して取締役が提案をし,
③取締役の全員が書面又は電磁的記録(例:電子メール)により,上記②の提案に同意する旨の意思表示をし
④監査役が当該提案に異議を述べなかった
場合には,取締役会の決議があったと見做すことができる制度です。

実務的には,法律に規定された③だけではなく,②④についても書面で残しておきます。
また⑤取締役会議事録は通常の記載方法と異なります。
②~⑤には適当な書式がありますので,弁護士にご相談ください。

デメリットとして,実際に取締役が互いに意見交換して議論するのではないため,恒常的に導入するには不便でしょう。


上記①のとおり,取締役会の決議の省略(会社法370条)制度を用いる旨を定款で定めておくことが必要ですが,コロナ禍以前から定款に定めを置いていた会社は多数派ではないように思います。私はコロナ禍前にはこの制度に関する相談は受けたことがありませんでした。
これを契機に,COVID-19に限らず,様々な状況に適応できるように見直しておくことをお勧めします。


なお会社法制定前の時代,書面持ち回り方式での取締役会決議(書面決議)は,最高裁昭和44年11月27日判決で不可とされていました。
会社法370条は会社法により新たに導入された制度です。